320日目 公衆衛生観点のガーナ人の工夫(2021/12/16)
公衆衛生で言われる「理想」と実際に暮らす中でのギャップは大きい。
保健指導の授業を組み立てる時、「ここで実行可能なもの」をベースに考えると、国際保健の勉強で学んだことは「机上の空論」が多いことに気づく。
理想通りに教えるのであれば、日本で学んだことをそのまま教えればいいけれど、現実的に考えると物凄くめんどくさかったり、実現不可能なことが多い。
そしてそれを肌身で感じるようになってから、実はガーナ人の行動はいろいろ制限がある中で衛生的に安全に過ごす工夫が散りばめられていることに気づく。
ただ、その中には「それはどうなんだ…?」と言われるものも含まれていて、どれくらいの「理想からのずれ」を許容するべきなのか迷う場面が多々ある。
<日常生活で見かけるガーナ人の工夫>
1)手洗いバケツに直接ソープを入れる。
井戸からくんだ水は誰かが何かを入れたかもしれないかもしれない。
(いたずらで上から子供が立ちション…など)
それの消毒と、子供たちがハンドソープを無駄遣いするのを防ぐために手洗いバケツに直接ソープを入れているのを見かける。
2)トイレは大と小で分ける。
排便用のトイレはぼっとんトイレが多く、排尿用トイレと区別する。
排尿用トイレは壁しかないため換気が良いのと、雨や日差しのおかげで多少匂いがマシになる。
綺麗なトイレは鍵管理。
というのも、屋根と壁があるということで、勝手に不審者が住み始めたり、使われるのを防いでいるらしい。
そのため、トイレに行くために鍵をもらわないと入れない。
一見綺麗たけど、水道管が繋がっていなくて使えないトイレにも出くわす。
3)使用済み生理用ナプキンは自宅までお持ち帰り。
学校で捨てると不審者が持ち帰ってしまう可能性があるため、自宅まで持ち帰って燃やすように指導。
4)極力手を触れないフルーツカット。
露天売りでは、べたっとした手をすぐに洗う水がないため、ビニール袋越しにカット。
みんなあまり手を触れずにフルーツを切ってくれる。
<実行不可能と感じたこと>
1)炎天下でのマスク着用
クーラ、ファンなしの1教室70人..。
暑すぎて無理。熱中症になる。
2)15秒間の流水での両手手洗い
毎朝、子供達が近くの水栓で桶に水をくみ、ベロニカバケツ(簡易手洗い器)まで水を運ぶ。
これがなかなかの重労働。
みんなが15秒流水で手をすすいだら、すぐバケツが空っぽになってしまう。
3)こまめな洗濯
全部手洗いなので時間がかかるし、水が勿体無い。
書いたことはごく一部の一例で、他にも
「なるほどなー」
「確かに無理だなー」
と思うところはたくさんある。
学生時代は
「なんで、健康でいるための行動が分かっていてもその行動を取らないんだろう。」
と思っていたけれど、要するに毎日繰り返すには面倒なことは継続できないし、自分の健康を差し置いても抗えない快楽や不快感はたくさん存在する。
結局、人間は
「健康でいるために生きる」
のではなく、
「生きるために健康でいようとする」
んだなと、改めて思う。